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これまでストックフォト・ストックイラストと言えば、登録クリエイターが『自ら撮影した写真』もしくは『自ら作成したイラスト』をアップロードすることが普通でした。

…が、近年になって生成AI画像という驚異の黒船が登場。

写真スキルやイラストスキルがなくとも(プロンプト等のスキルは必要)高品質な画像を生み出すことができ、しかも短時間で大量生産も可能。それを武器とした『生成AIクリエイター』なる者たちが鼻息荒くストック業界に殴り込みをかけてきました。

さらにそのノウハウを「AIを使ってストックで稼ぐ方法!」と発信することで小銭を稼ごうとする輩まで登場し、生成画像で楽に金を得ようとする素人は激増。結果『生成AI画像の投稿可』となっているストックサービスに大量のAI画像が投下される状況になりました。

その影響を受け、一部のクリエイターはもはや大砲ぶっ放されて逃げ惑うチョンマゲ侍状態。特にイラスト界隈では影響が大きく、AIの是非を問う議論が繰り返されています。

もちろんそれはクリエイターだけでなく、ストックフォトを運営している会社側にとっても『コレクションが大量の生成AI画像で溢れかえる』『既存のクリエイターの立場が脅かされる』という問題を抱えることになり、各社がそれぞれの対応をとり、その対応も時間の経過で変化がみられます。

今回は2025年5月の段階での『増え続ける生成AI画像へのストック各社の対応』について、少しまとめてみようと思います。

生成AIが投稿可能なストックフォト

生成AI作品を投稿可能なストックフォトサービスは多々ありますが、知名度の低いところはそもそも収入に結びつかないので省略。

メジャーとされる以下4社について、生成AI画像への対応を比較してみます。

・Adobe stock
・Pixta
・AC(フォト&イラスト)
・イメージマート

私も上記4社全てにクリエイター登録をし、写真作品を販売中。それと並行して生成AI画像も全てにアップロードしています。

Adobe stock

まずは天下のアドビ様。自社でもAdobe Fireflyという画像生成AIを提供していますが、他社での生成画像もアップロード可能です。

そのアドビは2025年4月頃から、『アドビコレクションと類似するコンテンツ』という理由での審査落ちを連発してくるようになりました。

これは『大量投下される生成AIによる類似画像』に対しての対応と推測されますが、生成画像はもちろんのこと、生成ではない作品も含めて同様のリジェクトが多発しており、さらにこの『類似するコンテンツ』という定義は自らのアップロード作品だけでなく、すでにアドビに登録されている画像に類似していればアウト…というエグいもの。あちこちで困惑するクリエイターが続出しました。

しかしその後、『投稿枚数に制限をかける』という旨の規約変更を発表し、類似コンテンツを理由とするリジェクトは減少傾向にあります。

2025年5月末の段階では投稿制限が実装されていませんので、どの程度の枚数になるのかは今のところ不明ですが、とりあえず真っ当なクリエイターにとって好ましい形になって欲しいものです。

↓アドビの投稿枚数制限に関してはこちらの記事で追っています。

Adobe stockに投稿枚数制限が…

私は本業がストックフォトグラファーなのですが、収入の約半分が『Adobe stock』での販売。やはりアドビは他ストックフォトとは売れ行きが違いますからな。 そしてどうや…

Pixta

こちらは以前から販売状況・審査通過率・タグ付の的確さ・etcでクリエイターに毎月の投稿枚数制限をしているので、すでに生成AI画像への対策がある程度出来上がっているとも言えるでしょう。

生成AI画像の登録方法が変化したくらいで、特に大きな動きはありません。審査基準に関しても変わらず激甘のままです。

ちなみに・・・私が生成AIに手を出したばかりの頃、今考えればひどく低クオリティなAI画像(その当時はいけると思っていた)を大量アップロードしたところ、審査は通過したものの枚数制限をがっつりと下げられました(笑)

その後、心を入れ替えて写真を主としながら高品質なAI画像の提出を心がけ、2~3カ月で制限は元通りに。

やはりピクスタはストックの中では一番マトモだな…と感じました。

写真AC・イラストAC

ACは大手の中では最もレベルが低いうえに、著作権を譲渡するという常識外れな規約もあり、登録クリエイターは写真・イラスト共にアマチュアや素人が大半。

それゆえAI生成作品に対するクリエイター側の反発は非常に強く、AC側の対応も2025年5月現在で『生成AI作品はチェックボックスで指定しないと検索結果に出てこない』という、本末転倒な対応になっています。

このフィルタリングにより、ライトなダウンロードユーザーは作品の存在にすら気づけず、新着以降は全くダウンロードされない…というケースも。

なにぶん冒頭に書いた『生成AIで小銭を稼ごう!』の流れで素人生成クリエイターが大量になだれ込んだ場所なので、既存クリエイターとのバランスに苦慮しているのでしょう。ただ、それならば最初から生成画像など受け入れなければ良かったじゃないか…と思いますな。

それでいて相変わらず審査はザル&不可解&身勝手ですし。

やはりACはストックの中では一番アレだな…と感じます。

イメージマート

こちらは比較的新しいサービスということで、生成AI画像への対応も特に大きな特徴はありません。

もともと枚数制限無しでやや厳しめの審査ですが、生成AI作品はさらに審査が厳しいという印象を受けます。

アドビで通った生成作品もバカスカはじかれるので、『審査基準を厳しくすることでAI画像の氾濫を防ぐ』という方向なのかもしれません。これはこれで納得の対応ですな。

しかしイメージマートの審査は『全て人間の目でチェック』とのことなので、このやり方は運営側の負担が大きいのではないかと心配に…。

生成AIとストックの未来

私個人としては、短期間に大量投入されてくる生成AI画像への対処としては、『投稿枚数の制限。そして生成画像に対する審査基準の引き上げ』というのが現段階では最もバランスがとれているのではないかと思います。

生成AI画像に関する議論は尽きませんが、もはやストック素材という市場でAI生成画像を完全排除することは困難でしょう。

「誰にでも作れるAI画像にわざわざ金を出すヤツはいない」という愚かな意見も耳にしましたが、現段階では思い通りの画像を生成するにも多少のスキルが必要ですし、そんなことに時間と手間をかけるならば検索してイメージ通りの画像をダウンロードするほうが企業側としても早く、コストもかかりません。実際にAI生成画像も相当数売れていますから。

結局のところAIが殴り込んできたところで、売れるものは売れる、売れないものは売れない…の図式は変わらんのですよ。それが撮影した写真だろうと手描きのイラストだろうとAI生成した画像だろうと同じ。その争いがさらに激化したというだけのことです。

それにあーだこーだと持論を展開して批判をしたところで、波に飲まれて消えるだけ。それで良いならば好きに騒ぐが良いでしょう。

まだまだ生成AI画像に関する議論は著作権を含めて進行中の段階ですが、現段階で『商用利用の生成サービスならば、登録可』となっている以上、クリエイター側としても大量になだれ込むAI画像に対処する手段は講じるべきでしょう。

ストックフォトサービスの運営側も、生成AI画像の利点を上手にコントロールしながら伸び続けていって欲しいものですな。