撮影した写真を登録しダウンロードしてもらう事で収入を得る『ストックフォト』 しかしカメラ・写真撮影を取り巻く環境が変わるにつれストックフォトという販売形式にも影響が及んできています。
今回は「時代変化によるストックフォト事情」と「これから先、ストックフォトで稼ぐには?」をテーマにゆるーく掘り下げてみようと思います。
ストックフォトとは?
『iStock』『PIXTA』『shutterstock』など多くのサービスがあるストックフォト。
フィルムカメラ時代から似たシステムはありましたが、インターネットの普及とデジタルカメラの誕生によって爆発的に発展を遂げた市場です。
ほぼ全てのストックフォトサービスは
- 登録クリエイター(撮影者)が写真素材(データ)をアップロードする
- ダウンロード会員(使用者)が写真素材をダウンロード(購入)する
- 登録クリエイターにマージン(規定の金額)が入る
という仕組み。
運営会社によってクリエイター登録に関する審査や写真素材の審査・料金体系などが変わってきますが、基本のシステムは同じです。
時代変化によるストックフォト事情
以前であれば素材に適した写真を撮影するには高価な機材と経験・技術が必要となり、素人にはハードルが高かったストックフォト。
しかしカメラの高性能化により、初めてカメラを持ったような人間でもそれなりの写真を撮影する事が可能に。さらにスマートフォンのカメラも目覚ましい進化を遂げ、それに付随してAIによる補正機能も飛躍的に進歩。
その結果「一億総カメラマン」などと呼ばれる時代になり、もはや『誰でも』『簡単に』『綺麗な写真』を作成する事が可能です。女子高生ですら恐ろしく上手(に見える)写真をポンポンとSNSで公開できるようになっています。
そしてそれはストックフォトというサービスにも影響を与えており、『登録クリエイターの増加』に伴い『写真素材は飽和状態』に近い状況。需要に対して供給が増えれば単価が下がるのは必然ですから、古くから写真撮影によって収入を得てきた人間にとっては変革を迫られる時代に突入しています。
一定水準以上の写真素材をコンスタントにアップロードできるトップクリエイターは別として、もはや中堅以下のクリエイターは食い合いとなってしまっているのが現状です。
さらに今は簡単にネット上の写真をダウンロードすることができ、著作権に関する意識が低いというのも問題。
「○○○の写真が欲しい」と思ったらGoogleで画像検索し、検索結果の中から適当なものを保存。それを勝手に使用する…といった行為を違法とも思わず行う人間は後を絶たず、単なる一個人ではなく自治体や企業までそういったやり方をするという呆れた状況。
いけないとわかっていながら「一部の人間にしか見せないからバレないだろう」と高をくくってみたり、ひどいものでは「ネット上に公開されているのだから勝手に使っても良いだろう」と勘違いしている愚かな人間までいます。
わざわざ写真のために、ストックフォトに登録して金まで払う必要はない。
…という意識の低さがストックフォトにも影響してきているという現実があります。
伸び続けているストックフォト
私も複数のストックフォトサービスにクリエイター登録し、毎月それなりに収入を得ていました。
しかし2~3年前から急激にダウンロード数の伸びが低下。私の力不足もあるのでしょうが、ミラーレス一眼の進歩で一気に『ストックフォト戦国時代』が訪れた感があります。
誰でも10万円程度のカメラで綺麗な写真が撮れる。しかもAI任せで一発補正。特別な知識も技術も必要とせずに、ストックフォトとして「それなりに」売れる写真が作れてしまうんですもの。
そして先程も申し上げたように、使用者側の意識の低下により「写真はネットで拾ってきて使う」という悪しき慣習も後押し。
そのせいかストックフォト収入はここ1~2年は横這い状態です。
(本来であれば登録素材が増えるにつれ収入も増えていく)
しかし、全く影響を受けずに伸び続けているストックフォトがあるんです。それは…
まさかの写真AC(汗)
多少でも写真で飯を喰っている人間なら目もくれないような低品質・低価格のストックフォトサービスで、正直私個人としてもあまり印象の良くないところです。
しかしそんな写真ACがこの時代にあってなお伸び続けるその理由は簡単。
ダウンロードが無料だから。
これに他なりません。
無料会員では一日の検索回数やダウンロードに制限があるものの、ちょっとしたブログやチラシ広告程度ならば十分。
『写真はネットで検索してダウンロードして使えば良い。わざわざ金を払うまでもない』と思っているユーザーと、『スマホでも綺麗な写真が撮れるから、ちょっとお小遣い稼ぎ♪』と考えるクリエイターの利害が一致した結果ということでしょう。
もともとクリエイターには1ダウンロード約3円しか入りませんので、どう爆発させても1ヶ月に10万円稼ぐことなど不可能。これ一本で食えるようなサービスではありませんが、非常に甘い審査(ほぼ無審査)とアップロード数無制限のおかげで、小遣い稼ぎ程度に考えるクリエイターには格好の稼ぎ場となっています。
ストックフォトの将来
「しっかりとコストをかけ、高品質な写真を使用したい」という需要は決して無くなることはありませんので、ストックフォトという市場が完全に衰退することはないでしょうが…それでもこれまでのような価格で長く続けられるとは到底思えません。ストックフォトサービスを展開している各社が『定額サービス』(一定の条件内でダウンロードし放題。クリエイターへの報酬単価も低い)を導入するようになったのも時代の流れからでしょう。
大手カメラメーカーの撤退やカメラ誌の廃刊など、写真撮影を取り巻く環境は大きく変わってきています。
古い考えや価値観に囚われず、柔軟な発想で乗り切っていかねばならないだろう…と、ヒィヒィ言いながらどうにかカメラにしがみついて喰っている者としては思うわけです。