『写真家』『カメラマン』『フォトグラファー』『写真作家』などなど、写真撮影を生業とするにもさまざまな呼び名があります。そして「一億総カメラマン時代」と呼ばれる今、『プロ』と『アマチュア』の境目も曖昧になってきています。
『写真家とはこういうものだ!プロとアマの違いはこうだ!』と、持論を声高に主張する方も多くいますが…その定義も人によってまちまち。明確な答えを出すのが難しい問題となっています。
今回はそれぞれの呼び名の違いと、プロとアマの定義。そしてカメラという道具で稼ぐという事について。いつもの如くゆるーい目線でのお話です。
注!)あくまでも『私個人の見解』であり、全ての方に価値観を強制するものではありません。
写真家とカメラマン
カメラマン、写真家、それらの呼称に明確な定義や資格はありません。近年はフォトグラファーという呼称もよく使われるようになってきました。
人によってその言葉から受けるニュアンスは異なりますが…あくまで一個人の意見として、呼称ごとの違いを説明致します。
カメラマン
写真を生業とするにあたって最も広い範囲で用いられる『カメラマン』という言葉。
カメラを使用して撮影をする人間は全て「カメラマン」と呼んで問題はないのですが、分類が細分化してきた現在では『クライアントの要求に応じた写真を撮影する』というスタイルの人間を指す言葉となってきています。
人物撮影やカタログ写真など『相手方の依頼』があって初めて仕事が成り立つ。「自分が撮りたいもの・伝えたい表現」ではなく「相手が求めているもの」を撮影する場合は『カメラマン』と呼ばれる職種に定義されるでしょう。
臨機応変な対応が要求され、最も技術と経験を要する職種でもあります。
後述する『写真家』よりも商業的なニュアンスです。
写真家
カメラマンよりも芸術家寄りな印象を与えるのが『写真家』
収入が多いか少ないかは別として、『自らが表現したいものを、自らが伝えたい形で写真にする』といった場合は「カメラマン」よりも「写真家」のほうがしっくりくる印象です。
さらにその道を追求し、独自の世界観を形成していった場合『写真作家』という表現もあります。
フォトグラファー
英語圏では「カメラマン(cameraman)」はテレビや映画などの動画撮影をする人間を指し、スチール(静止画)を撮影する場合は「photographer(フォトグラファー)」となります。日本では動画も静止画もひっくるめてカメラマンと呼ぶために誤解を招きやすく、その区分をより明確にするために使用されるようになりました。
これも明確な定義はありませんが「カメラマン」よりも芸術性を感じさせ、「写真家」と呼ぶよりもライトな感覚。そして無駄にシャレた印象があります(笑)
インターネットが発展してきた現代では、自由に写真を撮って発信することで「フリーフォトグラファー」を名乗る方も多くなっています。
ジャンルによって『トラベルフォトグラファー』『グルメフォトグラファー』など、独自の呼称を用いる場合も。
プロとアマの定義
写真撮影が限られた人間のスキルであった時代はすでに終わり、今では技術の進歩によって「誰でも」「簡単に」「綺麗な写真」を撮影する事が可能になってきました。スマホですらパッと見、美しい写真は撮影できます。
さらには単純に『写真を撮影して提供する』という以外にも、写真を撮影をすることで収入に繋げる手段は無限と言えるほど広がっており、何を持って『プロ』と定義して良いのやら。
ストックフォトなどは写真さえ撮影できれば簡単に収入(金額の差はあれど)に繋がりますし、素人カメラマンがブログやSNSを使用して収入を得る事も容易になってきました。「写真を使って1円でも稼げればプロ」としてしまえば、吐いて捨てるほどプロは存在します。
果たしてプロカメラマンとアマチュアカメラマンの違いとは何か、プロ写真家とアマチュア写真家の違いは何なのか、その意見はさまざま。
『写真撮影だけでメシが食えるのがプロ。それ以外はアマ』
『クライアントの依頼を受けて撮影するのがプロ。自己満足の写真撮りはアマチュア』
…などなど、それぞれがそれぞれの価値観でプロとアマを定義付けています。
どうも写真撮りは閉鎖的といいますか排他的といいますか…後から入ってくるモノを認めない風潮がありまして、互いにカメラという道具を使って収入を得ている人間同士でありながら互いを否定しあうような一面も。
そもそもどういったプロセスで写真を撮るかによってプロ・アマの区分は異なってくるでしょう。
クライアントからの依頼によって撮影するのであれば、その要求を満たす写真をしっかり提出できるのが『プロ』ですし、それができなければ『アマチュア』です。
自己表現として撮影するのであれば、自らの作品を販売できるレベル、他者に認めて貰って収益に繋がるレベル、それが『プロ』であり、自己満足の写真を撮って悦に入っているうちはどんなに技術があっても『アマチュア』止まりです。
これは反論もあるかもしれませんが、今の時代は『機材や技術、写真の出来』によってプロ・アマが決まるのではなく、『撮った写真をいかにして収益に繋げるか』というスキルの有無がプロ・アマの境目になっていると思います。
絞りやISOもよくわからない。ストロボも使った事がない。撮影は全てカメラ任せのオート。RAWも使わずカメラのアートフィルターを用いたJpeg一発撮り。
そんな撮影スタイルでも、それでしっかりと収入を得て食べていけているのであればそれは『プロ』と呼んで良いと私は思います。知人にもそういった撮影スタイルでしっかり収入を得ている方がいます。
「そんなヤツはプロとは呼ばない」と鼻で笑う方は多くいるでしょうが、プロは稼げているからこそプロとして成立する。どんなにこだわり、知識を詰め込み、形を大事にしたところで…それで稼げなけりゃ趣味の延長、もしくは自己満足に過ぎません。
失礼な言い方になってしまいますが、プロになる気がない、もしくはプロを名乗っても稼げなていない人間が「プロの定義」を語るほうがお笑い草かと。
カメラで収入を得る手段
写真スタジオを経営する、出版社に勤めて写真撮影をするなど、古くからのスタイルは未だに健在です(規模や収入は別の話として)
そしてインターネットが発展してきた現代ではストックフォトやデジタル写真集などで収入を得る事も容易です(これもまた収入は別として)
さらにはブログやSNSを使用して「美しい写真」を釣り餌とし、他の収益方法へと誘導する稼ぎ方もあります。さらには撮影した写真なんぞ一枚も出す事なく、Youtube等で『カメラ新製品レビュー』といった動画を配信し荒稼ぎしている方もいます。
もはや『カメラという機材を使ってお金を得る』という方法はほぼ無限。
冒頭でも書きましたが、今はデジカメの進歩と高性能なスマホの普及によって『一億総カメラマン時代』とまで言われています。100人いれば100通りの稼ぎ方があって良い、いや、むしろそうでなければ稼げない時代になっています。古い手段や概念にとらわれていては時代に飲まれて消えてしまいます。
ちなみに私が使用しているのはOLYMPUSのOM-D E-M1 MarkⅡ。コンパクトで20万円程度のミラーレスです。しかもセンサーはマイクロフォーサーズ。機材にこだわるハイアマチュアの方からすれば「それでプロとかありえない」と言いたくなることでしょう。しかし私は「プロ」を名乗っています。
著名な写真家に師事したことはありません。写真学校も出ていません。過去に出版社に勤めた経験もありません。撮影に関する技術は全て独学です。それでも日々研鑽し、自分に何が必要か不要かを突き詰め、ネットを駆使して収入を得、家族を養っています。
他人の批判が気にならないと言ったら嘘になりますが、私の最大の目的は『写真撮影によって家族を養うこと』であり、『無関係な人間からプロと認めてもらうこと』ではありません。そこにちょっとプラスして『自分なりの写真表現を追い求める』です。
カメラ業の区分とプロアマの定義
まとめ
どうも手前味噌になったうえに『何を言われようと稼いだもん勝ちじゃ!』的な内容になってしまいました(汗)
ざっくりまとめると…
- 依頼を受け、相手が満足する写真を提供する
=『カメラマン』 - 自分が伝えたいものを表現し、そこに価値を見出してもらう
=『写真家』 - どちらとも取れる表現で、なおかつちょっとおしゃれ
=『フォトグラファー』
- カメラという道具を用いて十分な収入を得る事ができている
=『プロ』 - どんなに知識や撮影技術知識があっても、それを収入に結びつけていない
=『アマチュア』
…というのが私個人としての見解です。
重ねて申し上げますが、どれも明確な定義や資格や条件があるわけではありません。悪い言い方をすれば「名乗ったもん勝ち」なところもあります。
あまり細かく悩みすぎず、広い視野と心で考えるのが最も良いのではないでしょうか。